迷惑メールとわたし、あるいは宇宙人との邂逅。

「お嬢様」と書かれているので女性だろうが、読み方がわからないキラキラネームを名乗るメールがやってくる。お会いするだけでお礼が用意されているらしい。

提示されている「1000万」のお礼が円の金額を表していると仮定した場合、見知らぬ相手と対面することにこれほどの高額な対価が必要な人物とはどのような状態だろうか。以下の仮定を検証してみよう。
 (1) ぼっち
 (2) 何らかの不快感を与える要素を伴う人物
     2-1 特異な動作音を伴う
     2-2 特異な臭気を伴う
     2-3 特異な形状を伴う
 (3) 不特定多数の人類との接触による情報収集を試みる、人類以外の何か

(1)から順に考えてみる。代理人を名乗る者がメッセージを送信しているという体裁から、「お嬢様」はぼっちではないらしい。

それでは対面の障害となりうる不快な要素を備えている可能性が考えられるが、情報が不足している。「グラマーで瞳が印象的な」と紹介されてジャバ・ザ・ハット似の何かが現れるとしても主観的判断であるから間違いではない。「お嬢様」には外見的に関わる情報が極めて乏しいため、形状の可能性は無限大であり、対面に差し障る問題ではなかろう。ラフレシアの香りを身に纏う可能性と間断なく快音を放出する可能性は保留となるが、ここまでくれば好奇心をそそられる要素でしかない。したがって(2)も高額な対価の根拠とはなりにくい。

残された理由は(3)である。ともあれ、金銭がお礼として評価される、というコンセンサスが存在することから、少なくとも「お嬢様」は現代日本の社会について一定の知識を備えているらしいと推測できる。

さて、一般的に高額な対価を支払って対面する席を設ける対象となる可能性の考えられる人物像としては以下の例を挙げることができそうだ。
1 政治的権力者
2 芸能人
3 経済的成功者
4 世界の株価をゆるがす特定の知識情報を独占的に所有している者
5 よく当たると評判の占い師

己をよくよく振り返ってみるに、かような内容に該当する部分としては4または5に類する範囲ぐらいしか心当たりがない。しかるに「お嬢様」は何らかの手段をもってわたしを「お嬢様」の必要とする特殊な情報を保有している対象と特定されたものであろうと推測するべきなのだ。

わたしも知らないが知っているはずの特殊な情報とは何か、そして「お嬢様」はどのような手段をもってその特殊な情報の所在と入手経路を特定したのか。まったくの謎であるが、ひとつだけ謎を解くことができる設定がある。それが(3)の状況、つまり「お嬢様」が人類以外の何かであり、情報収集を生業としていると仮定することである。

「お嬢様」は宇宙人、そう結論づけてしまってもよいのだろうか。ただし、こんな作文を本気にしないでほしい。