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あさげ、ひるげ、ゆうげ

永谷園のインスタント味噌汁の名称に隠された「け」。

 

「晩ごはん、夜ごはん、夕ごはん」の違いをなんとなく晩は深夜22時以降、夜は20時ごろ、夕は17時ごろ、とぼんやり思い浮かべてみながら、なぜそういう感覚にあるのか記憶を手繰ってみた。

 

「け」はお食事のことらしい。伊勢神宮外宮(げぐう)に「御饌殿(みけでん/みけどの)」と呼ばれる建物が知られ、「日別朝夕大御饌祭」として朝と夕に神饌(しんせん)と呼ばれる御饌(みけ=食事)をお供えする神事が行われているとのこと。1500年続く神事とされるから、お食事とは朝と夕にいただくものだったのだろうか。

 

www.isejingu.or.jp

 

え、昼は?

はて、古代にはお昼にお食事はないのか。つらい。

 

「午前8時から午前9時にかけて朝大御饌、午後3時から午後4時までにかけて夕大御饌」とはWikipediaの情報。「夕ごはん」17時感覚は古代からの神事となかなかにマッチしているではないでしょうか。畏れ多いが。おざっぱに「暗くなる前」が夕方の感覚としておこう。

 

それで冒頭の「あさげ」「ひるげ」「ゆうげ」に戻る。永谷園のサイトで確認したところ「あさげ」が1974年2月、1975年6月に「ゆうげ」、1976年2月に「ひるげ」がそれぞれ発売されているとのこと。ここでも朝と夕が先行して、昼は発売時期に遅れがみられる。正統なお食事タイムを朝と夕とする感覚や、「け」がお食事を意味する感覚は約40年前までは継続していたらしい。

 

では、昼のお食事が定着した時期はかなり新しいのではなかろうかと想像がつく。そして、晩と夜は時間帯は不明としても、近年までお食事タイムとして認識されていなかったのではないだろうか。

 

例えば「晩酌」。月を眺めて一献を風流とするならば、日が落ちて月が高く昇ってからだろう。「夜鳴きそば」も日が暮れてからの登場としていただきたいところである。晩や夜は酒を飲むか軽食のそばをいただくか、お食事とは別腹のものを口にする概念と共にあるらしい。時間帯で何かを食べることを指す例には他にないだろうか。「おやつ」だ。Wikipediaによれば「八つ時(14時頃)に食べる間食」をルーツとするらしい。

 

もしかすると、正統なお食事と、それ以外の時間帯に何か口にする機会は分けて考えられているのかもしれない。この仮設に基づくならば、正統なお食事以外の時間である夜に食べるものが「夜ごはん」で、晩に食べるものが「晩ごはん」となる。「おやつ」の例に従うならば、これらの「時間帯による喫食の機会」は時間帯だけで表現することもできるのではないか。

「晩は食べたの?」という言い方は確かに成立する。「夜はもういただきました」も大丈夫そうだ。しかし、具体的な時間帯は何かあいまいである。

Wikipediaによれば「夜(よる)は、日没から日の出までの時間のことである。」と定義され、晩は項目がなく夕としておおむね18時ごろが挙げられている。晩そのものに「遅い」の意があるとされることから、夕より後の時間帯を意識することになるようだ。

夕、夜、晩の順に時間帯を意識している根拠としてはこんなところだろうか。そして時間帯に「ごはん」を付ければいつでも食事時として呼ぶことができるシステムとはいえ、これらの時間帯のうち正統なお食事はたぶん「け」を伴う夕だけであったのかもしれない。

 

というわけで「夜ごはん」や「晩ごはん」は夜から晩へ食事の時間が遅くなるに従い普及したのではないかと推測できる。夜に明かりが普及してからの習慣と当てはつけたが、誰か検証してくれないかなー。

あと、朝と夕が正統ごはんである仮設に関連して、昼ごはんの登場についても別に検討するべきだろう。うっかり「新しい」概念だとか書いてしまったが、「け」の時代より新しいというだけで現代からは十分古い。

 

御饌殿は伊勢神宮の建物のなかでもとりわけ古式を伝えているとされる構造とのことで、食事に関することは古い慣習や感覚がよく伝わる部分なのかもしれない。まあ、どんな感覚だろうが腹が減ることは古代も現代も変わらないだろう。

 

 

きっかけはまず、ごはん名称の以下の記事。ぼんやり使っていて意識していなかった。

www.ikashiya.com

次いで昼ごはんについての記事を読んでインスタント味噌汁のことを思い出した。(追記:昼が単独で成立する件はこちらで指摘されていた。)

dk4130523.hatenablog.com

肝腎の「あさげ」情報。いまや手軽なインスタント味噌汁の代名詞「あさげ」が発売当初は高級品だったことに驚き。

www.nagatanien.co.jp

 

追記)さっそくお食事回数ほかについて解答をいただいた。なんとありがたい。だが、たいへんだ、なにしろ事はまったく単純ではないらしい。いつ食事をしたらよろしいやら、考えるだけで胃が痛い。

tagatanme.hatenablog.com