ホットケーキミックスにみる食品業界の技術革新とかそういうもの
新しいフライパン。
白く丸い美しいフライパン面をうっとりみつめて過ごす。しあわせ。
こんなしあわせは長く続かないらしい。フライパン面は焦げるらしい。
ならばいま、美しいフライパン面のある間に、そうだ、ホットケーキを焼こう。
ホットケーキミックスのパッケージに輝く見本のようなきつね色のふっくら美しいホットケーキが、丸いフライパンがあれば焼ける。きつね色ってどんな色やね、しかし。赤茶色いじゃん。
スーパーで適当にホットケーキミックスを買ってきた。森永のホットケーキミックス。4袋入って240円ほど。1袋あたり60円ほど。これに卵1個、牛乳100ml。袋には3枚焼けると説明。100円でホットケーキ3枚か。ジャムやバターを付けても150円ほど。
しかし甦る苦い記憶。市販のホットケーキミックスに受けた苦い仕打ちの数々が思い出される。膨らまなかったあのとき、なかなか混ざらない焦り、焦げにまみれた哀しみ、ふくらし粉(ベーキングパウダー)でしょもしょもする味。4回もこれを繰り返すのか。ああ、イヤだな。
でも、新しいフライパンで丸いホットケーキは焼いてみたい。
ということで焼いてみたい楽しみが勝った。卵は朝ごはん用のストックがある。牛乳はない。牛乳はなくてもいいや。
袋の裏に書かれた説明を読みながら作ってみよう。卵をボウルへ割り入れ、水100mlを加えて混ぜる。めんどうなので箸で混ぜる。混ざったら粉、ホットケーキミックスの粉を1袋入れろと書いてある。ああ、これが憂鬱だ。ダマダマになるんだろうな。ちょっとずつ入れないといけないんだよな、あーあ。既に気落ち。
しかしだよ。ここで奇跡が起こる。
手元が狂ってばっさーっ。奇跡じゃないよ、粗忽だよ。一気呵成にボウル内の卵水混合液へダイブする粉。あーっ、終わった。もう終りだ。
しかし、奇跡、奇跡が。どんよりしながら、まぜまぜしていると、あれふしぎ。しんなり混ざってくる。あれ、ダマダマにならない。え、なにこれ、技術革新?何かわからない技術的な何かによるのか、ともかく粉はさらっと生地になってしまった。
ホットケーキミックス界に何か起こっているのだろうが、知らなかった。
出来上がった生地は記憶している状態よりかなりもったりしている。水を足したくなるが、まあ、ここは説明通りに作ってみよう。今、森永のホットケーキミックスへの信頼感は自分史上最高値である。
さて、かなり驚きに満ちつつ、メインの焼き。フライパンで焼く。新しいフライパン、出してくるだけで嬉しい。ここでも説明どおりに弱火でだらだら焼く。こんなに時間かかるんだったか?ささっと焼けるものじゃなかったのか?もやもやするが、パッケージの説明への信頼がかろうじて勝つ。じっと待つ。プツプツと泡が空いてきた。まだ表面の生地はやわらかいようだが、一気にヒックリ返せと書いてある。
信頼に従い、がばっとひっくり返す。べちゃっと音がしたような気がする。そして、ここでまた奇跡が。あああっ、膨らんでいる。なんだこれ。ぷうーっと音がしそうな勢いで縁が立ち上がってゆく。すげえ。こんなに膨らむのか、パッケージの写真のとおり厚みが存在している。すごいぞホットケーキミックス。
このあたりでもう説明の手順以外をとる気はさらさらなくなっている。もう森永ホットケーキミックスの袋の説明の僕。命じられるままに、じっと弱火で膨らむホットケーキを見守る。
皿にはふっくら丸いホットケーキが3枚。
最後の関門、苦み。もしかして、もしかして、ここまでの改良が進められているならば、もしかして味の方も。と、期待を込めて何も付けずにそのままいただいてみる。
おいしい。ふくらし粉の苦い味がない。甘さもかなり控えめ。ああ、記憶の中のホットケーキとは全く違う、ふわふわのホットケーキ。森永すごい。ホットケーキミックスすごい。
改良がいつごろ行われたものかは不明だが、ホットケーキミックスはいつのまにか超改良されていた。膨らみ方も記憶のなかのホットケーキミックスとは違う。泡が繊細で生地がしっとり。これならホットケーキミックスでホットケーキ焼くよ。
もしかして、クックドゥーなんかも記憶のなかの味とは異なるレベルに変化しているのではないだろうか。そんな期待が湧き上がってくる。ホットケーキミックスも森永以外からも多数発売されているからには、これらも試してみなくてはなるまい。
新しく始めたいこと、といえば市販のケーキミックスや調味料を試すことだな。食卓のバリエーションも増えるし、いいことだらけじゃないか。フライパン大勝利だ。
今週のお題「新しく始めたいこと」
正しいふんわりホットケーキの公式。動画もあるよ。
過去の記憶とホットケーキのほろ苦い関係はこちら。ベーキングパウダーも調合によってかなり違うらしいと調べたぞ。
丸いふっくらホットケーキが焼けるまでの試行錯誤は省いた。メシマズアレンジャーが糾弾されるとおり、袋の裏の説明は絶対。ともかく水または牛乳の量は厳守。出来た生地で3枚焼く配分も厳守。説明の通りに焼けば、きっちりうつくしくおいしいホットケーキが焼ける。しかしちょっとでも違うことをすると、違う結果になる。意図して薄いパンケーキをたくさん焼くつもりでもなければ、書いてあるとおりに作るべきだろう。
あと、たぶん。フライパンの功績が大きい。